子どもの癇癪(かんしゃく):気質から見る、起きやすいきっかけと落ち着き方
泣き叫ぶ、床にひっくり返る、物を投げる。3歳を過ぎても、4歳、5歳になっても、気持ちが大きく崩れることはあります。小学校に上がってから、家でだけ崩れる子もいます。
癇癪が起きやすいかどうか、何がきっかけになるかは、子どもの気質によって違います。毎日のように崩れるからといって、育て方のせいとは限りません。
癇癪の起きやすさには、気質の差がある
精神科医のトーマスとチェスは、ニューヨークでの長い追跡研究から、子どもの気質を9つの面で記述しました。そのうちの2つが、「反応の閾値」と「反応の強さ」です。どれくらいの刺激で反応するか、反応したときにどれくらい大きく出るか。同じことが起きても、小さく文句を言って終わる子もいれば、全身で泣く子もいます。
3〜7歳の気質を調べたロスバートらの研究でも、怒りや悲しみ、不安の出やすさ(否定的情動性)が、気質の大きなまとまりの一つになっています。同じ研究で別のまとまりとして出てくるのが、気持ちや注意を自分で調える力です。この力は幼児期を通して育っていくので、年齢とともに癇癪が減っていく子が多いと考えられています。
きっかけは、子どもによって違う
崩れたその瞬間より、その前の数時間を見ると、きっかけが見えてくることがあります。どの子にも共通するのは、空腹と眠気です。夕方に崩れやすいのは、そのためでもあります。そのうえで、気質によって、きっかけの形が分かれます。
刺激がたまっていく子は、にぎやかな場所で過ごした日や、人の多い買い物のあとに崩れやすい傾向があります。その場では持ちこたえ、家に帰ってから、靴が片方見つからない、といった小さなことが最後のひと押しになる。感じ方が「敏感」の向きの子に多い形です。
途中で止められた子は、作っている途中や、遊びのいちばん楽しいところで「おしまい」と言われたときに崩れがちです。思っていた形にならない、うまくいかない、というときも同じように崩れることがあります。進め方が「こだわり」の向きの子によく見られます。
体の動きが足りていない子は、雨が続いて外で遊べない日や、長い移動のあとに崩れることがあります。エネルギーが「動」の向きの子に見られやすいきっかけです。
人の中で気を張っていた子は、園や学校では落ち着いて過ごし、帰ってきてから崩れることがあります。外では見せない分、家で大きく出る。エネルギーが「静」で、感じ方が「敏感」の向きの子に多い姿です。
崩れているあいだにできること
崩れている最中は、言葉が入りにくくなっています。説明や説得は、落ち着いてからに回します。
まず、けがをしないようにします。周りの物をどける、抱き上げて場所を移す。人や自分をたたくなら、手を止める。そのうえで、かける言葉は短くします。「いやだったね」「ここにいるよ」。言葉を重ねるほど、刺激が増えてしまう子もいます。
落ち着き方も、子どもによって違います。
- 刺激を強く受け取る子は、静かな場所や、明かりを落とした部屋に移ると落ち着きやすい。崩れているときは触られるのを嫌がる子もいるので、抱きしめる前に様子を見ます
- 体を動かしたい子は、抱きとめられるより、その場で跳ぶ、足を踏み鳴らす、と体を使ったほうが早く抜けることがあります
- 人に気持ちが向きやすい子は、そばに誰かがいると落ち着きやすく、一人にされると長引くことがあります
- 一人で落ち着くほうが早い子もいます。好きなものを手に持って、少し離れた場所で過ごす。目の届くところにいれば、それでかまいません
外で崩れたとき
スーパーや駅で崩れると、周りの目が気になって、早く泣きやませようと焦ります。それでも、することは家にいるときと同じです。
人の多い場所では、音や人の動きそのものが、落ち着くのを妨げることがあります。店の外や通路のすみ、車の中のような、人の少ないところへ移ります。買い物は、途中でも切り上げて出ます。周りの人に声をかけるなら「すみません、少しここで待ちます」の一言にして、子どものほうに向き直ります。
崩れやすい子と出かける日は、家を出る前に、何を買って、何を買わないかを話しておきます。お菓子は1つだけ、選ぶのは本人。決めてあっても崩れる日はありますが、店の中で一から言い合うよりは短く済みます。
落ち着いたあとに
落ち着いたら、何があったかを短く言葉にします。「積み木が倒れて、悔しかったね」。怒っている、悔しい、さみしい、と気持ちに名前をつけていくやりとりは、泣く代わりに言葉で伝えられるようになるまで、何度もくり返すことになります。
5歳を過ぎると、次にどうするかを一緒に考えられる子もいます。「次に倒れそうになったら、どうする?」。方法は本人に決めてもらいます。「呼びに来る」「いったん外に出る」。
叱るのは、崩れたことそのものではなく、人をたたいた、物を壊した、という行動だけにします。それも、落ち着いてから短く。
起きる前に減らせること
- 崩れやすい時間帯に、予定を入れない。夕方の買い物は、できるなら別の時間に回す。お迎えのときに、果物やパンを少し持っていく
- 刺激の多い日は、そのあとを空けておく。行事や遠出の翌日は、家で静かに過ごす時間を先にとっておく
- 遊びを終わらせるときは、終わりを先に知らせる(くわしくは「切り替えが苦手な子」)
- 泣く前に使える合図を、落ち着いているときに決めておく。「もう無理」のときは、決めておいたハンカチを大人に渡す、など
親のほうが崩れそうなとき
大きな泣き声、物を投げる音。毎日続けば、親のほうが持たない日もあります。何がいちばんこたえるかは、親の気質でも違います。
音や声に敏感な人は、泣き声そのものに消耗しがちです。安全を確かめたうえで、数歩離れる、耳栓をする。声の届くところにいれば、子どもを放っておくことにはなりません。
気持ちの切り替えが早い人は、子どもが長く引きずるのを見ると、「もう終わったでしょ」と言いたくなるかもしれません。落ち着くまでにかかる時間は、子どもによって違います。
予定どおりに進めたい人は、癇癪で予定が崩れることがこたえます。崩れやすい日の予定は、最初から少なめに組んでおきます。
それでも手が出そうになったら、子どもを安全な場所に置いて、いったんその場を離れてください。
相談したほうがよいとき
癇癪は、多くの子に見られるものです。ただ、次のようなときは、一人で抱えずに相談してください。
- 自分や人を傷つけることが続く
- 回数や長さが、増えていく一方に見える
- 家族が疲れきっていて、余裕がなくなっている
- 園や学校からも、同じように困っていると伝えられた
相談先は、お住まいの市区町村の子育ての相談窓口(こども家庭センターなど)や保健センター、かかりつけの小児科です。診断名がつくかどうかに関係なく、困っていることそのものを相談できます。