繊細な子(HSC)と気質:敏感さに合わせた、家での関わり方
服のタグを嫌がる。大きな音で耳をふさぐ。叱られると、大人が思う以上に長く引きずる。こうした子を指して、「繊細な子」や「HSC」という言葉が使われるようになりました。
HSC という言葉について
HSC は Highly Sensitive Child の頭文字で、「ひといちばい敏感な子」と訳されています。心理学者のアーロンらは、刺激を深く受け取る傾向を「感覚処理感受性」と呼んで研究しました。HSC は、この傾向の強い子どもを指す言葉として、アーロンが広めたものです。
医学的な診断名ではありません。病院で HSC と診断されることはなく、インターネット上にあるチェックリストも、診断のためのものではありません。
子どもの気質の研究では、刺激への反応のしやすさや、気持ちの揺れやすさを、生まれつきの反応のしかたの違いの一つとして扱ってきました。この記事でも、敏感さを「気質の向きの一つ」として書きます。
敏感さの出方は、子どもによって違う
ひとくちに敏感といっても、何に敏感かは子どもによって違います。
- 感覚:音、光、肌ざわり、におい、味。ざわざわした場所や、混ぜごはんの具をいやがる子もいます
- 気持ち:叱られたことや、友達のひと言を、長く覚えている。ほかの子が怒られているのを見るだけで、つらくなる子もいます
- 変化:家具の位置が変わった、先生の髪型が変わった、といった小さな違いに、すぐ気づく
敏感さは、ほかの気質と組み合わさって、見え方が変わります。
体を動かすのが好きで、初めての場にも飛び込んでいく子が、同時に敏感なこともあります。活発なので繊細だとは思われにくく、崩れたときに「急にどうしたの」と受け取られがちです。
じっくり様子を見る子が敏感な場合は、新しい場所や人の前で、長く動かないことがあります。見慣れないものの前で様子を見る傾向は、ケーガンらが「行動の抑制」として調べてきたものです。
人に気持ちが向きやすい子の敏感さは、人の表情や声の調子に向かいやすく、大人の機嫌の変化にすぐ気づくことがあります。ものや仕組みに関心が向く子の敏感さは、虫の模様の違いや、いつも乗るバスの音の違いのように、細かいところへの気づきとして出ることもあります。
周りの影響を受けやすい子がいる
同じように関わっても、受ける影響の大きさは、子どもの気質によって違います。84の研究をまとめた分析では、泣きやすく、なだめにくい子ほど、否定的な関わりの影響を強く受ける一方で、肯定的な関わりからも多くを得ていました。研究で「難しい気質」と呼ばれてきたこの気質は、敏感さと重なるところがあります。良くも悪くも、環境の影響を受けやすい子がいる、という見方です。結果は、気質のどの面を見るかや、測った時期によって分かれています。
子どもの気質を研究したトーマスとチェスには、「適合のよさ」という考え方があります。気質と、周りの求めることや関わり方が合っているかどうかで、毎日の過ごしやすさが変わる、というものです。これに沿うなら、敏感さそのものを減らそうとするより、周りの刺激の量や関わり方を、その子に合わせていくことになります。
家でできること
刺激の量を、1日の中で調える
外で刺激の多い時間を過ごした日は、帰ってから静かに過ごす時間を先にとります。テレビを消す、明かりを一段落とす、話しかけるのを少し控える。予定の多い週は、どこかに何も入れない日をつくります。
「気にしすぎ」と言わずに、感じていることを言葉にして返す
「そんなの気にしなくていい」と言われても、感じ方は変わりません。「この音、大きく聞こえるんだね」と、本人が感じていることを、そのまま言葉にして返します。そのうえで、できることを一緒に選ぶ。「耳をふさぐものを使う? 少し外に出る?」。
叱るときは、短く、静かな声で
敏感な子は、叱られた中身より、声の大きさや表情のほうを強く受け取ってしまうことがあります。叱るときは、静かな声で、何をしてほしいかだけを短く言う。叱り終えたら、いつもの声に戻して、話が終わったことを伝えます。「この話は、もうおしまい。手を洗っておいで」。
気づいたことを、拾って返す
小さな変化によく気づくのは、敏感さのもう一つの面です。「よく気がついたね」「どこで気づいたの?」と、気づいたことを拾って返します。
親も敏感なとき、親がおおらかなとき
親も同じように敏感だと、子どもの感じ方がよくわかります。一方で、子どもが崩れたときに、親も一緒に揺れやすい。泣き声で親が消耗し、その様子に子どもがまた気づく、ということも起きがちです。親自身が刺激から離れる時間を、1日のどこかに決めて持っておきます。
親がおおらかだと、子どもが何に困っているのかが、ぴんと来ないことがあります。自分なら気にならない音や肌ざわりで泣かれると、大げさに見える。感じ方が違うことを前提にして、本人の言うことを、まずはそのまま受け取ります。親が動じずにいることが、子どもにとって落ち着きどころになる面もあります。
園や学校に伝えるとき
家で見えている敏感さは、園や学校では見えにくいことがあります。外では持ちこたえて、家に帰ってから崩れる子もいるためです。先生に伝えるときは、「繊細な子です」「HSC です」とまとめるより、具体的な場面と、過ごしやすくなるやり方を伝えます。
- 「大きな声で叱られている場面を見ると、自分のことでなくても固まることがあります」
- 「体育館や行事の練習のような音の大きい場所では、端のほうだと過ごしやすいようです」
- 「疲れると、黙って動かなくなります。少し静かな場所にいさせてもらえると助かります」
困りごとが大きいとき
敏感さは気質の一つで、HSC かどうかを見分ける必要はありません。それでも、食事や着替え、登園のような毎日のことが立ち行かないほどの困りごとが続くなら、診断名がつくかどうかとは別に、お住まいの市区町村の子育ての相談窓口やかかりつけの小児科に相談できます。